JV工事とは?メリット・デメリットも併せて紹介!

土木・建設業界でいわれるJVとは「共同企業体」(Joint Venture)の略語です。
1つの工事を行う際に複数の企業が共同で工事を受注し、施工する際の組織のことを指します。
建設工事現場の仮囲いに「〇〇・〇〇・〇〇特定建設工事共同企業体」と書かれている看板を見かけたことがあると思います。

JVは1951年(昭和26年)に建設省(現・国土交通省)において制度化・運用化されました。
その目的は、大規模かつ高難度の工事の安定的施工の確保ならびに優良な中小・中堅建設企業の振興を図ることと明記されています。

Joint Ventureとは直訳すると合弁会社を意味します。
各企業が共同企業体に対して出資を行い、その出資金の持分割合により、利益の分配を受けることになっています。
JVは民法上の組合に当てはまるため、法人税の損益は出資者に帰属します。
したがって、共同企業体の仕入れや引き渡しを行ったときには、それぞれ出資者利益分配割合に応じて、出資者が課税仕入れや課税資産の譲渡を行ったことになります。

JVとは実際にはどのようなもので、どのようなメリット・デメリットがあるかを詳しく説明していきます。

JVの種類

公共工事の入札の種類
JVは1951年に運用が開始されましたが、現在の国土交通省発注工事においては共同企業体運用準則」(建設省建審発第12号:昭和62年8月17日)に基づいて運用されています。各地方公共団体においても同様の運用がされています。

JVでは目的によって以下4つの制度が設けられています。

  • 特定建設工事共同企業体(特定JV)
  • 経常建設共同企業体(経常JV)
  • 地域維持型建設共同企業体(地域維持型JV)
  • 災害復旧工事特例共同体(復興JV)

特定JV

建設業界では建築物の規模種類特徴が多岐に及んでいるため、大手ゼネコンでも業種(同業種でも構造物の種類)によって得意・不得意が有り受注可能分野の偏向が生じる場合が多いです。
例えば橋・ダム・トンネル・高層ビルなどは特殊な技術での建設工事では特定のゼネコンに偏向しての発注になりがちです。

また、近年の大規模構造物は構造・設備などの専門工事が細分化される傾向があるため、各専門工事業者への分離発注が困難なケースが生じる傾向が多くあります。

このような状況を解消する手段として運用されたのが「特定JV」です。
各分野に秀でた企業同士がJVを結成して一つの工事に対して、総合的な受注・施工を行うことで円滑かつ速やかな施工が可能になります。
特定JVでは発注工事ごとに結成され、通常2〜3社ですが大規模工事では多数の企業で結成される場合もあります。

経常JV

中小規模の建設業者同士がJVを組織する形態です。
これにより一企業では受注できない規模の工事を複数の建設業者の共同企業体で行うことによって、大規模な工事を受注・遂行することができるようにするために設けられた制度です。

経常JVは単体の企業と同様の組織として見なされます。
行政など発注機関の入札参加申請時に経常JVとして申請を行うことによって、一定期間単体企業と同様に有資格建設業者として登録されます。

地域維持性JV

経常JVを発展させたもので、地域の維持管理に不可欠な事業(除雪・除草などの維持補修や道路管理・河川管理などのインフラ管理事業及び災害応急対応)について行われます。
地域の建設企業が継続的な協業関係を確保することにより、それらの実施体制を安定確保するものとして平成23年に制度化されました。

技術者要件として通常のJVよりも技術者要件(専任制)が緩和されていること、単体企業との同時登録及び経常・特定JVとの同時結成・登録が可能な制度であるのも特徴です。

復興JV

復興JVは震災を機に設立されたJV制度です。
被災地域において、従来は地元企業のみが入札参加していた工事にて、地域外の建設企業も構成員とする制度です。
被災地域で技術者不足などにより地域の単体企業のみでは遂行できない工事にて、地域外の建設企業(技術者等)を活用する制度です。

工事現場に選任する技術者はJVで1名でも可としています。

東日本大震災では復興のための工事で多くの入札が不調に終わり、復興工事が進まない状況が発生しました。
その後、日本全国から多くの大手・中小ゼネコンが復興JVに参加し、復興工事を遂行しました。

施工方式(甲・乙)によるJV

先に述べた4つのJVは、施工方式によってそれぞれ2つ(甲・乙)に分けられています。

  • 「甲型共同企業体」

共同施工方式のことで全構成企業があらかじめ定めた出資割合(例:A社40%・B社35%・C社25%)に応じて出資金・人員・建設機械を拠出し一体で工事する方式を言います。

出資とは財産価値のあるもの全てが対象でJV資金計画に基づき進捗に応じて決定されます。
損益計算についてもJVとして会計単位を設け合同での損益計算が行われます。
利益(損益)についても同様に各構成企業の出資割合によって配分されます。

  • 「乙種共同企業体」

分担施工方式のことで、全構成企業が請け負う工事をあらかじめ分担した工事に対して、責任を持って施工する方式です。
例えば、スタジアム工事においてA社は屋根、B社は本体、C社はグランドなどに分担して工事する方式です。
ただし、他の構成企業の工事に対してもお互いが連帯して責任を負うことが分離発注工事との大きな違いです。

したがって乙種施工方式では各構成企業によって利益をあげる企業とあげない企業が生じる場合があります。

JVのメリット

大規模工事の円滑な実現

公共工事において大規模な工事もしくはインフラに関する工事などはほとんどがJVによる工事によって行われています。
一社では工期内竣工が困難な工事でも多くの力のある企業がJVを組むことによって、短期間の工期で完成させることが可能です。
工期内に竣工させることは、社会にとっても大きなメリットになります。

横浜スタジアムの工事では10社以上でのJVが組織されて要望通りの工期で完成させた例などもあります。
最近ではオリンピックスタジアム(国立競技場)の工事にて、ゼネコンと設計事務所とのJVが編成され設計技術協力のもとに、予定工期でクオリティーの高いスタジアムを完成させた例などもあります。

困難な工事の実現

特殊な技術が必要な工事においても、技術を持たない企業がJVによって参加できる可能性が生じることは大きなメリットです。
例えば城建築の改修工事などは専門的な技術が多く要求されます。

特にお城の屋根を避けて足場を組むことは高度な工法が必要になります。
例えば姫路城の改修工事では地元ゼネコンと社寺建築に特化した他地域のゼネコンとのJVで改修工事を実現しています。

分担方式によって、他地域のゼネコンは得意な分野での施工のみを担当し、地元のゼネコンは本体主要工事を担当することによって低コストで高品質の改修工事を完成することができた良い例です。

復興工事の実現

東日本大震災では多くの地方都市が壊滅し、緊急の復興工事が必要になり、地元の建設業者だけではそのキャパシティに対応できませんでした。
同時にその他地域での建設業社だけでは、作業員や建設機械の出張費などでコストアップになります。
通常の予算内での建設はとても困難な状況があちこちで発生しました。

しかしながら復興JVによる工事によってお互いの問題点を補い、多くの工事が実現した例があります。

JVのデメリット


JV工事には先に述べましたようにいくつものメリットがあるのと同時に、デメリットもあることも注意する必要があります。
今回は最も一般的な「特定JV」についてのデメリットについて説明します。

JVスポンサーメリット

特定JVにおいては構成企業数社のうち出資比率が最も多い企業を「スポンサー会社」と呼びそれ以外の企業を「サブ会社」と呼んでいます。
JVの構成企業間は法的には対等です。

しかし、実際には構成企業の中から代表者を選定し、JVの代表者として対外折衝や業務執行を中心に行えるように権限を付与することになります。
この代表をスポンサーと呼び出資比率の最も多い構成企業から選任されます。
工事事前業務から現場乗り入れまでの、見積業務・入札金額決定・受注契約・協力会社の発注などをスポンサー会社が主に行うことになります。
色々な面でスポンサー会社にとって有利な選択がしやすくなるのが実情です。

具体的に述べますと、協定原価の決定権・下請け業社の選定・自社機材等の優先使用などです。
スポンサーメリットはサブ会社にとっては大きなデメリットになるので注意が必要です。

サブ会社の注意点

躯体に関する型枠・鉄筋・とび土工などへの発注業務は品質・工程・安全を左右する重要工種です。
これらの工種についての発注単価を相場と比較することや、サブ会社専属の躯体業者から見積もりを取るなどの確認作業が重要です。
数量についても工事標準歩掛なども確認する必要があります。

また、スポンサー会社との関係が薄い協力会社にも見積もり参加させるなどして、客観的な金額チェックを行う方法も考えられます。
以上に見られるように、色々な角度からスポンサー会社のコスト管理を確認していく必要があります。

連携する利益・責任

先に述べました「甲型分担方式」では、出資比率に按分する形で利益(損益)は配分されます。
つまり自社が担当した工事では利益と共に、他社が担当した工事での損益も自社利益に影響してくるということです。

「乙型分担方式」では自社の分担工事の利益がそのまま利益となりますが、他社の分担工事に関する品質工程安全に関しても連帯して責任を負うことを踏まえなくてはなりません。
つまり他社が倒産などにより途中退場した場合でも、工事の履行に関して連帯責任を追うことになるということです。

他社の経営状況や施工品質などを事前に詳しく確認することはもちろんですが、保険への加入などによるリスクヘッジも十分に行った上でJVに参加する必要があります。

まとめ


JVとは、1つの工事を行う際に複数の企業が共同で工事を受注及び施工する際の組織のことを指します。
参加企業にとってまとめると以下のようなメリットがあります。

  • 単一参加できない専門工事・大規模へ参加できる。(特定JV・経常JV)
  • 受注の安定化が出来る。(主に地域維持性JV)

その反面でスポンサー会社・サブ会社・協力会社それぞれのデメリットがあることも理解頂けたかと思います。

以上、本稿が皆様のJV工事制度を検討・実施する際の参考になれば幸いです。

参考・引用文献

1)国税庁HPより抜粋 No.6129 「共同企業体の納税義務」

2)国税庁HPより抜粋 仙台国税局 「別紙 JV工事の長期大規模工事の判定について」

3)建設省建審発第12号(昭和62年8月17日)「共同企業体の在り方について」

4)国土交通省 共同企業体運用準則(H23.11.11)

5)国土交通省 地域維持型建設共同企業体の取り扱いについて(H23.12.9)

6)建設会計ラボ
https://kensetsu-kaikei.com/lab/construction-cost/joint_enterprise_system

7)建設業許可ストレート.com
http://www.straight-hp.jp/jvseido

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です